◆原発問題にどう対処するか

2011年4月21日付メッセージ

 原発についてはいろいろと議論が賑やかではあるし、多くの論点があって議論すべきことも多い。とりあえず現時点での私なりの思いをまとめてみた。

1 福島第一原発の安定化

 3月11日の大震災以降1ヶ月以上が経過していて、被災地の復旧は少しずつ進んでいるものの、原発はまだまだ全く予断を許さない。格納容器をとにかく冷却しなければならないし、そのためには放水が避けられない。
しかし他方では汚染濃度の濃淡はともかく汚染水が大量に発生するので汚染水の処理が必要であり、放水は痛し痒しの状態だ。この汚染水を外部に排出するのではなく、循環させることで放射性物質の外部漏出を防止しようとしているが、なかなか困難なようだ。

 このあたりは極めて技術的な要素が強いので、回りの素人があれこれ言うよりも現場の技術者を叱咤激励して頑張ってもらうしかないかと思う。とにかく一日も早く安定化をめざして取り組んでもらうほかはない。現場の作業員の疲労もかなり蓄積しているようで、十分な食事や休息も確保して体調にも十分配慮しながらやってほしい。

 国会での議論としては原子力損害賠償法3条による「社会的動乱、異常に巨大な天災地変」に該当するか否か、東電や政府の責任はどこまでかといった責任論があるが、こうした東電の責任問題云々よりもまずは安定化こそが最優先の課題である。そのために政府としても全力を挙げての支援が必要だ。

2 徹底的な検証

 今回の原発事故について、何故こんな事態に陥ったのか、これまでの安全神話はどうであったのかなどの徹底した検証は当然やらなければならないことだ。菅直人首相は4月18日の参院予算委員会で「安全性を大事にしながら原発を肯定してきたが、従来の先入観を一度白紙に戻し、なぜ事故が起きたのか徹底的に根本から検証する必要がある。」と述べている。
白紙からの検証には誰も異論はないであろう。

 これまでアメリカのスリーマイルやソ連でのチェルノブイリ事故があっても、我が国では安全、安全と安全神話が語られ、多くの国民も何となくそれを信じてきた。しかし、今回の事故は安全神話を完全に覆した。「想定外」との言い訳は通じない。

 この際、国の原子力行政のあり方自体も検証の対象にしなければならない。つまり、今までは内閣府の審議会である原子力安全委員会と経済産業省の外局である原子力安全・保安院との二本立てになっていた。
経産省は外局に資源エネルギー庁も抱え、ここでは原発推進の旗振り役をしている。原発の応援と規制監督の両方を持たされていたわけで、以前からその問題性は指摘されていた。しかも、官僚OBの天下りを何人も電力業界に送り込んできた。最近でも前資源エネルギー庁長官が退官後4カ月で東電顧問に就任している点が国会でも問題にされ、枝野幸男官房長官も憤りを隠せなかったほどだ。こういった天下りや癒着問題をも含め組織のあり方自体の検証からやるべきだ。

 これまで、原発は必要だ、安全だとの基本認識に立って推進をしてきたので、国民の側に立った安全性チェックがされていなかったのではないかと考える。専門家と称する人たちも、いわば「原子力村」あるいは原発推進派のなかでの仲間内の議論を行ってしまい、開かれた議論にはなっていなかったのではないかと感じられる。

 原子力安全委員会は学識経験者たちで構成し、専門的・中立的立場から原子力安全・保安院を監督する二重チェック体制という建前になっていて、具体的に東京電力を規制監督するのは後者ということになっている。
こうした仕組みのせいでもあるかもしれないが、マスコミに毎日のように出てきて説明をしているのは原子力安全・保安院のほうであって、原子力安全委員会が今回の事故で何をしているのか、その活動が見えにくい。この点も検証が必要だ。

 国の原子力行政は、今後、推進から抑制へと軸足を移すことは必定であり、原発に懐疑的な識者も交えた、開かれた場での議論をしていかなければならない。

3 徹底的な節電

 東電と東北電が福島第一原発の事故などで招いた電力不足は、ピーク時の消費の4分の1である18百万キロワットにも上るという。これまで贅沢に使っていた電力を徹底して節電しなければならない。国会内でもかなり徹底して節電をしている。国会の廊下は暗くしているし、エレベータも一部休止、動く歩道も休止している。私の議員会館での部屋での電気もこまめにスイッチを切っている。

 政府は東電、東北電管内の節電対策の骨格を決定している。その内容は、契約電力5百キロワット以上の工場など大口需要家に25%、商店などの小口に20%、家庭には15〜20%の削減目標を出している。評判が悪かった計画停電よりも遙かにましであるが、これがどこまで実行されるかが問われる。特に、夏真っ盛りのピーク時にどこまで電力消費を抑え込むことができるかが勝負だ。
でも銀座や赤坂の夜はまだまだ明るい。ネオンも輝いていてあまり節電はされていないようで、夏に向けて節電の徹底が必要だ。

 法律上は電気事業法では節電を確かなものにするため、大口に対する使用制限の発動を認めているものの、小口や家庭向けの強制的な措置は規制がない。家庭には節電を促す以外に有効な手だてがないが、やれば案外できるのでははないと思う。

 この際、節電だけではなく私たちの生活全般をエコの観点から見直ししなければならない。今回の災害はまさに被害甚大で、東北地方の被災者の皆さんのおかれた状態に対しては言葉を失うほどではあるが、私たちの生活自体を見直すきっかけにしなければ被災者の皆さんに申し訳が立たない。
無駄な電気を使っていないか、誰も見ていないテレビの付けっぱなしはしていないか、空調機の使いすぎはないか、自販機はあれほど必要か、などいくらでも実践ができる。
私は東京都の石原慎太郎知事はまったく評価しないが、しかし石原知事が自販機が多すぎるのではないかといった発言には同調できる。ついでに言うと、24時間のコンビニストアが昼間も夜中も煌々と電灯をつけて営業をしているが、果たしてそこまで必要なのか疑問がある。
こうした時期でもあり、いきなり法的規制は無理にしても深夜の営業についてはその自粛を強く要請をすべきではないかと思う。

 ちなみに私はリターナブル瓶の利用促進を訴えている。日本では家庭で飲むビールは残念ながらほとんどがアルミ缶になっているが、ドイツではビールは瓶で飲む。ドイツでは伝統的に缶でビールを飲むなんていう習慣はないようで、この点は日本と全く違う。日本ほど自販機がある国もないし日本ほどアルミ缶のビールがある国もない。もっとガラス瓶の促進を図るべきだ。アルミ缶の製造にはガラス瓶に比べてはるかに多くの電力を必要としているから、なおさらである。

4 エネルギー政策の見直し

 今回の原発事故によってエネルギー政策の転換は避けられない状勢だ。常識的に考えても、これから原発の新増設は簡単には進められないであろう。全国の原発54基のうち半数は止まったままで、今のところ再開の目途すら立っていない。原発から再生エネルギーへの転換を大胆に進めるときがついにやってきたと思う。

 現在、政府による「エネルギー基本計画」には、2030年までに原発14基の新増設を目指す方針が盛り込まれている。菅総理はその見直しを明言しているし、原発の新増設などまず無理だ。現実問題としても、今回の震災で原発の新増設を受け入れる自治体が出てくるとも考えにくい。

 国の原子力委員会も、原発を温暖化対策とエネルギー安定供給に欠かせぬ基幹電源と位置づけたエネルギー政策の転換を迫られ、原子力政策大綱の改定作業の中断がされている。

 しかし稼働しているすべての原発をすぐに止めてしまうこともできないのもまた現実である。日本の電力の約30%は原子力で作られている。日本経済や国民生活への影響を考えれば、いきなり全面停止することは現実的ではない。
一定の原発は安全管理を徹底することで動かしていくほかないが、徐々に原発は廃止へと向かわなければならない。特に危険なのは中部電力の浜岡原発であり、東海地震のおそれも考えれば、早めに廃炉の方向を示すべきだと思う。

 原子力発電に替えるものとしては、風力や太陽光発電など自然エネルギーの拡大を柱に措くしかない。こうした再生エネルギーを徹底して創り出す仕組みを構築し、効率のいい分散型のエネルギー供給体制をつくる必要がある。
先日、ソフトバンクの孫正義社長が民主党の対策会議に出席され、基金を10億円提供して東日本の自然再生エネルギー発電を積極的に実施するプランをお話しされたが、実に時宜を得ている。大いに応援したい。

 さらに課題としては東日本と西日本とでの電力のやりとり問題もある。電力供給の土台は東日本だけでなく、全国規模で危うさを増しているから、西日本から東日本への電力供給を可能にするような変電所の体制整備も大きな課題である。
今回は東北地方の地震ではあったが、静岡沖の東海地震、名古屋沖の東南海地震、和歌山沖の南海地震などいつ発生してもおかしくないと地震学者らは言っている。お互いに電力のやり取りができるようにも国家戦略として取り組む必要がある。
いずれにせよ色んな意味でエネルギー政策の転換を図っていかなければ、被害を受けて苦しんでいる皆さんにも申し訳が立たない。


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