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◆水俣病、民主党案5つのポイント

2009年6月2日付メッセージ

 民主党案では、水俣病に関する専門家の意見に基づいて、救済の対象者を広く定めている。

与党案では、四肢末梢優位の感覚障害にかかった者のみを対象。
 民主党案では、これに加えて、
 @四肢末梢優位の触覚又は痛覚のいずれかの感覚障害(乖離性)、
 A全身性の感覚障害、
 B口周囲の感覚障害、
 C舌の二点識別覚の障害、
 D求心性視野狭窄 及び
 E大脳皮質障害による知的・精神・運動障害
          のいずれかにかかった者も対象にしている。

 

与党案は、95年政治解決において四肢末梢優位の感覚障害にかかった者のみが対象となったことを受けて、その考え方に固執。
民主党案は、最高裁判決や水俣病被害者の臨床の最前線にいる医師から得られた医学的知見に基づいて水俣病の被害を受けたと認められる者のすべて救済対象とする。
与党案の救済対象は、要するに95年政治解決時点から一歩も前進しないもので、最高裁判決をも無視している。

 民主党案では、救済を受けるに当たって、訴訟や公健法の認定申請を取り下げることを条件としない。

与党案は、訴訟を提起している者が救済を受けるには、これを取り下げることを条件とすることを明確にしているが、これは、訴訟の続行か救済かの二者択一を迫るものであり、裁判を受ける権利の点から大問題。
また与党案は、公健法の認定申請中の者についても、同様に取り下げることを救済の条件としているが、これは、すなわち、救済と引替えに公健法による補償をあきらめさせることを迫っているに等しい。
松野自身、95年政治解決当時、苦渋の選択を迫られた苦い経験があるので、これを繰り返すべきではない。

 

また、訴訟・公健法の認定申請を取り下げた者は救済の対象とし、そうでない者は救済の対象にしないという区別が、そもそも合理的、平等な区別か、大きな疑問がある。

 民主党案では、調査・研究及びこれらに基づく救済措置の拡大を規定している。

与党案では、水俣病全容解明に向けた調査・研究を想定していない。
民主党案では、これを規定し、特に胎児性水俣病及び小児性水俣病の病像論については、未解明の部分が大きいことに着目し、現段階では胎児性水俣病及び小児性水俣病の被害者も含めた全面的解決は困難との前提の下で、調査・研究及びこれらに基づく救済措置の拡大を想定している。

 

調査・研究の結果、新たに水俣病被害者と認めるべき者が出てくることが想定されるが、与党案は、こうした者の救済を示していないにもかかわらず、今回の救済策をもって水俣病問題の最終解決としている。

 

チッソの分社化については、水俣病問題の第一義的な責任主体を消滅させるものであり、将来の水俣病被害者の発生が考えられるから安直にこれを認めることはできない。

 

また、与党案のチッソの分社化は、水俣病被害者の補償・救済に要する費用の総額がほぼ確定するという前提の下で成り立っているが、これは困難。
将来において水俣病被害者と認めるべき者がどの程度発生するかは不確定であり、補償・救済に要する費用も不確定という前提に立たざるを得ない。

 民主党案では、一時金の支給に要する費用は、まず国が負担し、事後に原因事業者や県に求償することとしている。

水俣病問題は、典型的な公害問題であり、PPPの原則に従った補償・救済が求められる一方で、特にチッソの財政状況を踏まえれば、国としても必要な措置が求められる。
95年の政治解決についても、国が救済に要する費用を貸し付けた後に、結果として大部分債務免除をしており、チッソの負担を貫徹できなかったというのが、実際であった。

 

民主党案では、こうした事情を踏まえ、かつ、最高裁判決により国等の損害賠償責任も認められたことに着目して、一時金を国によって支給した上で、その後にチッソの負担分を求償することとしている。
この求償の制度は、PPPの原則に沿ったものであり、「民主党案はPPPの原則を無視している」という批判は当たらない。

 

与党案は、一時金をチッソが支出する制度設計にしているが、それ故に、一時金の支給についてチッソが事前に了解していることが前提となっている。その結果、
@救済の内容が被害の程度・内容からではなくチッソの負担能力を主眼として決定された不十分なものになり、
Aチッソの分社化という原因事業者を消滅させる措置をセットにせざるを得なくなっている。

 民主党案では、公健法の地域指定の解除は規定しない。

民主党案では、特に胎児性水俣病及び小児性水俣病については、今後、被害者とすべき者が発生する可能性があることを前提としている。そして、胎児性水俣病及び小児性水俣病については、母体を通じたメチル水銀の強烈な曝露を受けて重症化している事例もある。
今後、胎児性水俣病又は小児性水俣病の被害者のうち公健法の認定を受けるにふさわしい被害者が出てくる可能性があり、公健法認定の途を残しておく必要性がある。

 

成人の水俣病患者にしても公健法の認定を受けるにふさわしい被害者が埋もれれている可能性は大いにある。にもかかわらず、公健法の地域指定の解除をすることとなれば、こうした被害者が補償協定による補償を受ける途を完全に閉ざしてしまうことになる。