弁護士から転進して政治家へ・・・

日本の政治家で前職が弁護士といった法律専門家が多いのか?!といえば、案外そうでもありません。日本の政治の場合に、政治家が法律を作ることがとても少ないからです。日本で法案が成立した内訳をみてみると、議員立法は16.5パーセントで内閣提出法では83.5パーセントと大きく違っています。日本の政治は「議院内閣制」になっています。国会議員は法律をつくるのではなく、内閣の提出した法案に関して「YES」か「NO」を決めるのが、選挙で選ばれた国会議員です。では、内閣の提出する法案を作っているのは誰??となると、それがいわゆる各省庁の官僚たちです。議院内閣制では政権を握る与党が自分たちの政策に沿った法律を、官僚の力を借りて実現します。官僚の力を借りてしまうために、各省庁の大臣たちは国民から選挙で選ばれた議員であるにも関わらず、担当する省庁の代弁者となってしまう問題点が常々言われています。

脱・官僚とはいっても、法律の専門的な知識と理解がなくては官僚が作り上げた事案をチェックすることができません。各省庁はそれぞれ自分たちの所属する利益を優先した行動をとることが非難されています。政治家からの要望で政策を立案しながらも、うまく自分たちの権益を確保しようとしているからです。官僚の力を借りながらうまく官僚を操られないようにする。政治家にはそんなしたたかさが求められています。

法律のプロ

議員立法は法律を議員で作ることです。法律を読むんでも理解することがとても難しい内容ですが法律のプロともいえる弁護士が議員ならば、議員立法がもっと増えていくのではないか。という気もしないでもありません。法律のプロでもある弁護士出身の政治家ならばそれでいいのか?!というとそこも難しいところです。なぜなら、弁護士は職業的に裁判のたびに論法を変えていきます。法廷の場で有利な点を引き出すことに着目するので、弁護士として優秀という評価になるのは被告にとって有利な判決を引き出すことがでるかどうか?!という点だからです。日本にどれぐらい弁護士がいるかといえば、3万5000人ほどですが、司法試験はとても難しく日本にたくさん資格がある中でも間違いなくトップクラスの難関資格が弁護士資格です。

弁護士出身の政治家もたくさんいます。男性ばかりではなく女性でも弁護士の肩書きを持ちながら政治家として活躍している議員もいます。国会議員ではなく県制などで活躍している人たちもいます。弁護士はやなり「弁」がたつ人が多いので、政治家のほうから選挙に出ないか?!と誘われ政界へはいるキッカケが多いのではないでしょうか?!弁護士で国会議員になった議員にはどのような方がいらっしゃるのでしょうか?!

弁護士から転進して政治家へ・・・

司法修習34期の代議士

自民党の谷垣禎一氏は弁護士出身の政治家です。そして谷垣氏の大学時代(東京大学法学部)の同期に民主党の仙谷由人がいます。政治理念は違ってもやはり同期ということで今でも冗談を交わすこともある仲だそうです。谷垣氏と司法修習34期の同期には、まだ他にも政治家がいます。公明党の山口那津男氏、国民新党の伊東秀子氏、民主党の千葉景子氏、そして同じく民主党の松野信夫氏です。司法試験に合格すると最高裁判所に司法修習生として採用されて、弁護士・検察官・裁判官と志望するのが違っていたとしても、原則として同一カリキュラムに沿って司法修習生として修習を受けます。

谷垣氏は父親が政治家ということもあり、父親の谷垣専一氏の秘書を務めながら司法試験を数回受けて昭和54年(1979年)に合格しています。学生時代から弁護士志望で父親からも議員は世襲じゃないからと言われて育っていたようで、政界入りを考えて東大法学部へ入ったのではなかったようです。仙谷由人氏も谷垣氏と大学の同期ですが在学中の昭和43年(1968年)に司法試験に合格しているので、司法修習では23期になり同期ではありません。

伊東秀子氏は大学を卒業してから家庭裁判所調査官を経てから、35歳の1979年に司法試験に合格しています。松野信夫氏も大学卒業後もしくは在学中に司法試験に合格したという道ではありません。卒業してからいちど損害保険会社に勤務していますが、やはり弁護士になりたいという思いから、司法試験に挑戦して28歳の時に念願の弁護士になりました。谷垣氏はとても若く見えますが、年齢では松野氏よりも6歳年上です。

弁護士出身の代議士で多いのが、旧社会党から出馬している人たちが多いようです。社民党の代表を勤める福島瑞穂さんも弁護士です。選挙に出馬して当選すれば議員として議員報酬が支払われますが、落選すれば収入はなくなってしまいます。自営業や鳩山家のようにかなりの資産家であれば、議員報酬がなくても十分に生活が成り立ちますが勤め人で選挙に出馬するために仕事を辞めた場合、落選してしまったら生活の糧を稼ぐ方法が必要になるので弁護士の場合、もし落選しても弁護士という資格があるので勤め人よりもやはり経済的には安心だからこそ、弁護士に出馬を促すケースが多いのかもしれません。

座右の銘は「誠心誠意」の松野議員

「誠心誠意」を座右の銘にしているのは、司法修習34期の代議士で弁護士資格を持つ松野信夫さんです。親が政治家で地盤を引き継いだわけではありません。旧社会党からの出馬でもなく自民党でもなく、民主党からの出馬で代議士になりました。選挙区は熊本県ですが両親が熊本出身で奥さんも熊本出身です。

昭和26年(1951年)6月2日に東京都中野区で生まれました。東京学芸大学附属小金井中学校、東京都立西高等学校、そして大学は東京大学法学部を卒業しています。在学中に弁護士資格を取得したわけではなく、大学卒業後は損保保険会社へ就職していますが、やはり弁護士になりたいという思いが強かったようで司法試験にチャレンジします。28歳の時の昭和54年(1981年)に念願の司法試験に合格して弁護士になりました。弁護士となり昭和56年(1981年)に結婚していますが自身の両親のふるさとでもあり奥さんも熊本出身ということから、熊本への移住を決めました。

このあたりが会社員には出来ないことです。転勤を願うかもしくは転職して地元企業へ勤務しない限り、なかなか自分の望む場所で住むことはできないからです。弁護士や税理士、また医者といった資格を持って入ればこそ、同じ職種で希望する土地で働くことができるというのがとても魅力的です。魅力的とはいってもそう簡単に弁護士資格など取れるはずもなく、やはりこれは難関資格だからでしょう。松野さんは熊本へ昭和57年(1982年)に移住して、熊本県弁護士会へ入会して熊本で弁護士として活動をはじめました。

政治家を志した理由

弁護士という仕事が、政治家へと気持ちを駆り立てていったようです。弁護士時代にかかわった社会的事件の水俣病やハンセン病などで被害者救済にかかわり、被害者が長い間救済されずに切り捨てられて放置されていたのは、政治が機能していないからではないか?!といった理由です。

かなり大型な公共事業の諫早干拓裁判や川辺川ダム裁判に関わったこともあります。宝の海の有明海をどうして干拓する必要があるのか?!とニュースでもかなり取り上げられましたが、川辺川ダムも長期化したダム事業の体表的なダムでもあります。川辺川は「日本最後の清流」とも呼ばれるほど、アユの漁場としても大変有名でもあり川辺川ダム工事反対に関わる運動は0年近くも強固な反対運動が続けられています。

一般市民からみても、無駄とも思える公共事業は多くあるので、弁護士として関われば関わるほどこれは政治が悪いと思えてきたのかもしれません。

平成12年(2000年)に民主党の公認として第42回衆議院銀総選挙へ遂に出馬します。ところが惨敗でした。現職で元大蔵官僚の野田毅さんにダブルスコアの大差で敗れてしまいました。再び3年後の第43回衆議院議員総選挙に民主党の公認候補として出馬しますが、選挙区の熊本2区で今度は自民党の林田彪さんに敗れてしまいますが、重複立候補していた比例九州ブロックで復活当選で初当選となりました。

平成17年(2005年)第44回衆議院議員総選挙で、自由民主党の野田毅に再び敗れてしまい落選していますが、落選してもあきらめずに再びやはり熊本2区からの出馬に意欲をだしていましたが、当時の民主党代表だった小沢一郎さんからの参院選への要請を受けて平成19年(2007年)第21回参議院議員通常選挙に熊本県選挙区から出馬して、自民党の三浦一水さんを破って当選となりました。ちなみに熊本選挙区は自民党が大変強い地盤ということもあって熊本県選挙区で自民党候補者を敗ったのは平成元年(1989年)第15回参議院議員通常選挙以来のことになりました。

平成24年(2012年)6月に、野田第2次改造内閣の際に、法務大臣政務官に任命されました。ところがこのあと12月に行われた第46回衆議院議員総選挙で民主党が大敗してしまい、松野さんが熊本県の選挙区から選出された唯一の民主党議員となりました。そして平成25年(2013年)に、第23回参議院議員通常選挙で、自民党の馬場成志さんに2倍以上の得票差をつけら落選しました。落選した松野さんは弁護士として活動すると共に、次の出馬にむけて準備中といったところです。

衆議院議員として当選回数は1回、参議院議員では当選回数1回の松野信夫さんですが、代議士の時にはどのような議員連盟に所属していたのでしょうか?!所属していた団体などから、松野さんの政策理念が見えてきます。弁護士時代に

所属していた団体や議員連盟

  • 公共事業チェック議員の会・・・平成6年に「公共事業チェック機構を実現する議員の会」として発足しました。国会議員による超党派の議員連盟です。公共事業に関するチェック機構を設立することを目的としています。
  • 民主党被爆者問題議員懇談会・・・原爆症認定制度には、厚生労働省は裁判で確定するまで原爆症と認定しないため、厚生労働省の姿勢を改めるための懇談会です。自民党や共産党にも同じ懇談会があります。
  • 戸籍法を考える議員連盟・・・平成21年に民主党内で設立された議員連盟で、部落差別撤廃、選択性夫婦別姓法案導入、婚外子差別撤廃などにも積極的です。
  • 「共謀罪」に反対する超党派国会議員と市民の集い・・・呼びかけ人として現在の治安維持法といわれる「共謀罪」に反対する議員たちの集まりです。共謀罪は犯罪がじっこうされなくても合意しただけで罪に問われるものです。
  • 立憲フォーラム・・・平成25年4月に発足した護憲派による超党派の議員連盟です。保守政党が推進する日本国憲法第96条改正に反対して、定期的に勉強会を催しています。、
  • 死刑廃止を推進する議員連盟・・・平成6年に日本での死刑の廃止を実現するために結成された超党派の議員連盟です。かつては100名を超えましたが、現在は30名程度に減っています。
  • 人権政策推進議員連盟・・・部落解放推進委員会を発展的に解消して引き継いだかたちです。
  • リベラルの会・・・民主党のグループで、平成16年8月に護憲派とリベラル系の若手議員が集まって結成されました。
  • 在日韓国人をはじめとする永住外国人住民の法的地位向上を推進する議員連盟・・・平成20年1月に民主党内に設置された議員連盟で、在日韓国・朝鮮人などの「永住外国人に地方選挙権を付与する法案」を実現させることを目的としています。
  • 朝鮮半島問題研究会・・・平成20年2月に結成された議員連盟で、超党派の拉致議連とは一線を画していて、北朝鮮に対する「対話と圧力」ではなく、融和的な外交政策の復活を目指す議員連盟です。

選挙区が熊本県ということもあって、地元熊本の「川辺川ダム」の裁判にかかわっていたこともあって、公共事業チェック議員の会の議員連盟に所属するのも納得できます。政治理念は「正義と公平の追求」「官僚政治の撤廃」「政治家との癒着を断ち切る」を理念として掲げています。計画されてから未だに着手されていない川辺川ダムなどは、このままどうなっているのか。という点も気になりますが、公害病の水俣病も未だに救済と保証お問題は解決していません。やはり法整備が必要なのだと感じることでもあります。